2020年3月10日火曜日

株式会社門崎 代表取締役社長 千葉祐士氏登場。

in-職(いんしょく)ハイパー“飲食の戦士たち”株式会社門崎 代表取締役社長 千葉祐士氏登場
本文より~

奥羽山脈の麓、岩手県一関市。

牛の鳴き声を聴いて育った。今回、ご登場いただいた千葉氏の父親は家畜商を営み、牛の目利きでは東北でも知られた存在だった。
舞台は、岩手県の一関市。岩手県は三陸海岸で有名だが、一関市は内陸にある。千葉氏が小さい頃は、「川崎村」という名称だった。小学校は1クラスだけ。人口は少なかったが、自然の豊かさが魅力的な土地だった。
中学生になると、音楽に興味がわく。当時、流行っていたのはスピーカーとチューナーが一体化したオーディオコンポ。価格は15万円と安くはなかったが、どうしても欲しくなり、新聞配達をはじめる。朝4時半過ぎに起き、新聞を配る。毎月の給料から7000円を母に預けた。毎月7000円だから、2年でおよそ15万円がたまる計算になる。
いよいよコンポを買おうと、お金の話を母にすると「生活費に遣ってしまった」と言われ、その時はじめて、「うちが裕福ではないとわかった」と千葉氏は話す。

生産者と消費者をダイレクトに結びつける。

大学に進学した千葉氏は、いちばん時給が高いという理由で、個別指導の大手塾でアルバイトを始める。全国に130校あり、講師は山ほどいたが、千葉氏はそのなかで、売上3位の成績を残している。上位にランクインするのは、プロ講師ばかり。アルバイトは、千葉氏だけだった。
「『千葉ちゃんはすごい』って言われてました。じつは卒業したらそのまま、フランチャイズで、その塾を経営しようとも思っていたんです。でも大学4年のゴールデンウィークの時かな。営業部長から『新卒の就職活動は、一度しかできないから』とアドバイスをいただいて、たしかに、その通りだと。それで就職活動を開始します。1ヵ月ほど活動して、大手食品フィルムのメーカーから内定をいただきました。この時は、一千億円企業の社長になるのも悪くはないなぁ、と思っていました」。
この会社で、千葉氏は、ダイレクトマーケティング時代の到来を予想する。しかし、予想はしても、何を作るか、何を売るか、手段も方法も、知らない。
「やっぱり起業をしたいと考えていました。でもまだ20代でしょ。未熟なまま会社を辞めていいのか。そういう思いもあって相当、悩みました。ただ、一方で『ダイレクトにユーザーとつながるビジネス』というテーマは、頭から離れない。悩みながら、岩手にもどったある日のことです。牧場で飼育している牛が、モーっと鳴いたんです。その声でひらめいたんです」。
うちの実家はいうならば肉の原料メーカーである。
「アイデアはいいと思っていたんですが、ひとつ問題点がありました。牛の値段はセリで決まります。つまり、生産者に値段の決定権はないんです。それでは、私がいうダイレクトマーケティングではない。いろいろ悩み、セリに回さず消費することを選択します。消費といっても、私が食べるわけじゃない。直接、消費者に食べてもらう。そうすることで、生産者と消費者がダイレクトにつながるんです」。
「どちらが上とか下とかじゃなく、生産者と消費者は互いに影響を及ぼしている」と千葉氏はいう。その両者を結びつける手段として、千葉氏は飲食事業を開始する。
27歳の時のことだ。

オーダーできるのは、おまかせコースのみ。

理念はただしい。ただし、消費者は、理念では動かない。
「ダイレクトマーケティングができる形で飲食をやろうと思って、岩手県一関市に『五代格之進』をオープンするんですが、なかなかふるいませんでした。最高の黒毛和牛。でも、当時は輸入牛が一般的でしたから、それと比べると、比較にならないほど価格が高かったんです」。
工夫も重ねた。ただ、今思えば、裏目にでることも少なくなかった。韓国風の味付けにしてみたのも、その一つ。黒毛和牛は、肉に風味があり、甘みもある。だから、にんにくダレは、不要。試行錯誤の結果、答えは「そもそも肉が違うのだからほかを真似ても意味がない」だった。
そして、今ではポピュラーとなっている、「五代格之進」オリジナル「塩胡椒、山葵、ポン酢で食す」が生まれる。黒毛和牛の本来の旨味は、消費者を魅了した。
しかし、千葉氏は、まだ納得しない。
「牛肉といったら、ヒレやサーロイン、ロース、モモなどが一般的。ただ、うちみたいに一頭仕入れしないとわからないのですが、和牛は82の部位に分けられるんです。たとえば、カメノコ、サンカク、トウガラシ、ネクタイなどと細やかに切り分けられ、味もちがう。そういう部位ごとに異なる味も、ちゃんと楽しんでもらいたいと思ったんです」。
その思いが募り、2000年から「おまかせコースだけ」という思い切った作戦にでた。
「私が消費者の方に食べて欲しいと思ったものを食べていただく。これなら部位ごとに異なる味を楽しんでいただけますからね。そうしないと、無駄な肉がでてしまい、生産者という立場からすれば、つらいことです」。
単品を注文したい客は離れたが、大半の消費者は「コースオーダーだけ」にも好意的だった。それは、そうだろう。専門家が勧める今まで知らなかった旨い肉が食べられ、「肉」の世界が広がるのだから。
ただ、好意的といったが、繁盛しても原価をかけているぶん、赤字ギリギリだった。このあと東京に進出するのだが、それも青息吐息だった。と笑う。

食の未来は、生産者だけじゃつくれない。


「東京に来てからもたいへんだった」と千葉氏。岩手と東京の往復は、夜行バス。東京では、姉の嫁ぎ先の物置を借りて寝泊りした。
「店舗数としては、現在、13店舗まで広がりました。しかし、今も昔もですが、店舗数の拡大だけがテーマじゃない」。
「日本の食の未来を、消費者と生産者とともにクリエイトする」。これが、千葉氏のかわらぬテーマである。「消費者と生産者とともに」がポイントだ。生産者だけで、「食の未来」はつくれない。
だから、千葉氏は、店舗を単に「食事をしていただく場所」とは位置づけない。「生産者と消費者をつなぐハブだ」という。なるほど、連鎖の「鎖」だ。この「鎖」は、「証券取引所」の役割も担っている。つまり「格之進」で食事をした消費者は、次の生産に投資していることになる。
「安く仕入れ、安く売ればいいなんて店じゃない。お客さんだって、ぼくらの仲間だと思っていますから」。
この話のあと、千葉氏は「CSA」という聞き慣れない言葉をつかった。調べてみると、「コミュニティ・サポーテッド・アグリカルチャー」の略で、アメリカで広がっている生産者支援型消費のことらしい。「消費者が支持する生産者」である。「これは、私たちのテーマにも沿った考えかたです。だから、うちは、CSAを推進するハブでもあるんです」。農家がいい肉を育て、それを消費者がハッピーな表情で食べる。この「連鎖」。同時に、消費は、投資となり、生産者をサポートする原資となる。
・・・続き
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